エリアマネジメント南山の活動のあれこれをお伝えしていく連載記事の第3回目。
今回は「里山とは・・・?」です。
私たちの身近な自然「里山」。エリアマネジメント南山のニュースレターや、イベントでも何度も使ってきた言葉でもあります。南山のまちは、元々は里山として使われてきた土地にできています。里山の言葉の意味や、里山をめぐる背景について、お伝えできたらと思います。
1)里山の言葉の意味
「里山」とインターネットで検索してみると、下記のような説明が出てきます。
里山(さとやま)とは、集落、人里に隣接した結果、人間の影響を受けた生態系が存在する山をいう。
【wikipedia】 https://ja.wikipedia.org/wiki/里山
これをもう少し噛みくだいてみます。
里山とは、私たちが生活しているすぐそばにある山であり、生活に必要なものを得るために利用し、その活動の影響を受けた生き物たちや植物が育まれている自然(山)のことを指します。手を加えた自然ということで「2次的自然」や「2次林」とも呼ばれます。人の手が入らなくなった林は「極相林」という植物の移り変わりが落ち着く状態へと変化していきますが、今回は、詳しい解説は省きます。
生活に必要なものというのは、家を建てるための木材や、その木を木炭や竹炭にして燃料として利用し、落ち葉は家畜の糞尿とともに時間をかけて堆肥にして、畑で作物を育てるための肥料として使ってきました。現在では少なくなってしまいましたが、山で切った材木にドリルで穴を開けてキノコの菌を打ち込み、キノコを栽培するようなことも行われていました。
山菜の季節になれば収穫したり、四季を通じて暮らしを営むための様々な活動が行われ、自然の移り変わりに人の手が入った結果、手つかずの自然とはちがう豊かな生態系(動物や植物、人間を含めた関わり合いのシステム)が育まれてきました。
(*エリアマネジメント南山では、キノコの植菌体験のイベントを開催したこともあります)
里山のほかに、里地、里海というように、人々の暮らしと密接した自然のことを指す言葉も生まれています。
2)里山をめぐる背景
かつて、いまのように近代化・都市化が進む前は、多くのまちでは農業や畜産業のような一次産業が主な産業で、里山も生活に不可欠な、人間の活動と密接した自然として存在していました。稲城も同じように里山を利用してきた経緯があり、南山では縄文時代からこの地で暮らしが営まれてきたことがわかっています。
ただ、現代では、木炭や竹炭はガスに変わり、木材は海外から輸入してきたものが使われるようになりました。畑につかう堆肥は化学肥料に置き換わっていったり、私たちの生活の仕方の変化と合わせて生活に必要なものを得るために里山を利用することは少なくなっていきました。
さらに、里山を管理してきた人たちも高齢化してきており、手入れが行き届かなかったり、経済的な価値が生み出しにくくなってしまった結果、手放され荒廃してしまう、という状況に置かれています。これが、日本各地の里山の立ち位置です。
一方、南山では、これまで手がつかず荒れてしまった土地もありましたが、ここ数年の間で、NPOが立ち上がり、自分たちのフィールドをもち整備を進めたり、地元の保育園や幼稚園が自然・農業体験の場所として土地を取得して整備が進んでいる場所が増えてきました。住宅地との距離が近い南山の特徴を生かして、里山を新しい使い方が広がり始めています。
3)里山との新しい関係性
「生活に必要なものを得るための山」という私たちと里山の関わりは、かつてよりも弱くなってきています。
しかし、開発が進んでいった結果、自然は少なくなり希少性が高くなってきていることや、自然を豊かなところで暮らしたいという声も徐々に増えていっていることも実感として感じています。南山にまだ残る里山の自然に魅力を感じて、このまちに越してきた、という声もよく聞きます。
南山の里山のなかには、拠点をもち、活動を広げている団体もあります。
エリアマネジメント南山では、そういった団体と協力しながら、今の時代にあった「里山との新しい関係性」を生み出し、育んでいきたいと考えています。これまでにもキノコの植菌体験や、収穫体験などイベントを通じて里山のことを伝える活動も取り組んできました。山で集めたどんぐりから苗木を育て、奥畑谷戸公園の敷地内に植樹をするなど緑の再生も行っています。生産の場所としての里山以外にも、自然体験やレクリエーション、リラクゼーションの場としての可能性も考えられます。畑作業をしてみたいという声も少なからずあり、そういったニーズに合わせて、活動を広げていきたいと思います。
ぜひ里山でやってみたいことがあったら、教えていただけると嬉しいです。一緒に体を動かしたい、みどりが好きで関わってみたい、という方も歓迎しています。